Division of Molecular Immunology

リンパ組織の形成に障害をもつ種々のノックアウトマウスが報告されてから、正常マウスを用いた解析のみでは困難であったリンパ組織の形成に関わる分子機構の研究に新たな道が開けた。

全身のリンパ節、腸管に存在するパイエル板(Peyer's patch)、脾臓などの二次リンパ組織は、免疫担当細胞間の緊密な相互作用が行われる場として生体防御機構に重要な役割をはたす。近年、これらのリンパ組織形成に障害をもつ種々のノックアウトマウスが報告され、リンパ組織の形成に関わる分子機構を詳細に解析することが可能になった。腫瘍壊死因子(tumor necrosis factor : TNF)と類似のすなわち、炎症性サイトカインと考えられてきたリンホトキシンalpha(lymphotoxin-alpha)の欠損マウスでリンパ節とパイエル板が欠損するという発見が端緒となり、この分野の研究が大きく進展した。

私どもは、自己寛容の成立機構に関わるmTECの構築化にもリンホトキシン受容体(LTbetaR)やreceptor activator of NF-kappaB(RANK)などのTNF受容体ファミリーが重要なはたらきをもつことを明らかにするとともに、その下流でNF-kappaBの活性化をもたらすNF-kappaB inducing kinase(NIK)とIkappaB kinase alpha(IKKalpha)の役割についても研究を行ってきた。今後は、こうしたシグナルが、どのような系列の細胞に、どのような分化誘導作用をもたらしているかの詳細を明らかにし、自己寛容の成立機構にはたらくmTECの人為的操作を可能にしたいと考えている。

私達の身体には、細菌やウイルスといった外敵の侵入から身を守る手段として免疫システムが備わっている。ところが、何らかの原因により免疫系が自分自身の組織や臓器に攻撃をしかけるようになり、自己免疫疾患という難治性の病態が発生する。胸腺や脾臓・リンパ節といったリンパ組織は、こうした免疫システムの構築と破綻が起こる「場」として重要である(事項)。

原因不明の難病である自己免疫疾患の病態を明らかにすることは、免疫システムの根幹をなす「自己・非自己の識別機構」の作動原理を理解することと、ほぼ同義である。とりわけ、胸腺における自己反応性T細胞の除去(負の選択:negative selection)と制御性T細胞(regulatory T cell)の産生は中枢性自己寛容(central tolerance)の要点であり、それらのメカニズムの全貌解明は免疫学における大きな課題である(図1)。

 研 究 テ ー マ 

こうした理由から、比較的まれな疾患であるにもかかわらず、AIRE欠損症は自己免疫疾患の病態解明に重要な役割をはたすと考えられている。AIREは胸腺の間質(stroma)を構成する髄質上皮細胞(medullary thymic epithelial cell: mTEC)に発現する転写因子で、北欧、なかでもフィンランドに多くの疾患家系が存在する遺伝性自己免疫疾患[自己免疫性多腺性内分泌疾患I型(autoimmune polyendocrinopathy-candidiasis-ectodermal dystrophy:APECED)]の原因遺伝子である。AIRE遺伝子のクローニングから早くも十余年が経過したが、未だに自己寛容成立過程におけるAIREの真の役割については必ずしも統一見解に達している訳ではなく、私どもはAIREがmTECの分化プロセスにおいて重要な役割を担い、それによって自己寛容の成立にはたらいているという仮説を立てて、その検証作業に取り組んでいる。

さまざまな視点からAIREの機能を明らかにする目的で、これまでに

1)AIRE欠損マウス(図2)
2)AIRE/GFPノックインマウス(図3)
3)AIRE/Creノックインマウス(図4)
などの遺伝子改変マウスを樹立し、解析を行ってきた。現在も、新たなAIRE遺伝子改変マウスを樹立し、真のAIREの機能を解明したいと考えている。

図1

図2

図2

図3

図4

ヒトの遺伝性自己免疫疾患の原因遺伝子AIREの機能解析

リンパ組織形成の分子機構の解明

Institute for Enzyme Research

Tokushima University

徳島大学先端酵素学研究所 次世代酵素学研究領域 免疫病態学分野

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